「英単語の氏素性(2) 金融単語編」

「英単語の氏素性(2) 金融単語編」 (ISBN 978-4-904913-07-9)
   定価 1,500円      版形 B5      頁数 40      

本書の内容

この本は、金融関係の英単語の話のエッセイですが、内容は金融の専門家でなくてもわかる話です。実際、著者は金融についてはむしろ素人で、ただ実務翻訳の経験の中からメモしていた「語学的に面白い話」を集めたものです。金融関係の方には語学面での話を楽しんでいただき、語学学習者はこれを通じて若干でも金融語彙、金融そのものに興味をもつ足がかりとしていただけるとよいと思います。

<書評> 

語源の旅~英単語の氏素性(2)金融単語編

長年ヨーロッパ言語教育に取り組んできた著者が、英語をビジネスや勉強で必要とする人に向けて書き下ろした英単語の語源物語第二弾。


金融不安や不況にまつわるニュースが多い昨今では、「デフォルト」や「デフレ」などカタカナ英語として浸透した言葉を耳にする機会が増えました。本書ではそういった経済・金融関連の日常よく耳にする単語から、一見高度に見える単語に至るまでを語源を通じて一気に学習してしまえる内容となっています。古くはラテン語、ギリシャ、北欧語等を起源とする語が、いくつもの音韻変化を経てイタリア・フランス・ドイツなどのヨーロッパ諸国に渡り、時を経て英語に入ってきたという、謎解きともいえる著者の解説を読んでいると、さながらヨーロッパを歴史的空間的に旅しているような気分になってきます。


漢字と同じく、英単語にもよくよく観察してみると「へん」と「つくり」に分けられて、それぞれが意味を持つ語が数多く存在します。著者の深い語学知識が凝縮されており、かなり難しい用語も含まれますが、本気で英語を学びたいという人にはぜひお勧めしたい一冊です。

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掲載の単語

1.    Account   
2.  Assets
3.  Auditor
4.  Bad Debt
5.  Balance of Payment
6.  Bond
7.  Budget
8.  Capital
9.  Cash
10.  Commission
11.  Default
12.  Deflation
13.  Depreciation
14.  Derivative
15.  Dividend
16.  Equity
17.  Finance
18.  Hedge Fund
19.  High Risk, High Return
20.  Interest
21.  Journal
22.  Liability
23.  M&A
24.  Market
25.  Money Laundering
26.  Operation
28.  Portfolio
32.  Securities
33.  Stock
34.  Transaction
35.  Voucher
36.  Warrant
37.  Write-off


 <内容のサンプル> 短めの記事をひとつご紹介しておきます。

Money Laundering

 「マネー・ロンダリング」 money laundering という言葉もすっかり定着しました。「ポケットマネー」、「マネーゲーム」など、すっかり日本語になった money という言葉の起源はローマの一番偉い女神 Juno の名前で、この女神は「警告の女神」でもありました。この女神は別名 Juno Moneta といい、その神殿で貨幣が鋳造されたことから moneta が「貨幣鋳造所」転じて「貨幣」を意味するようになったのです。現在、英語では「貨幣鋳造所」のことを mint、「貨幣」が money となったのです。金融の方では「マネー・サプライ」money supply は「市場に出回っている資金」のことを意味し、日本語化していますね。
 money の形容詞 monetary(貨幣の、通貨の)はよく見る言葉で、International Monetary Fund(国際通貨基金=IMF)はよく知られています。
 ところで、この moneta というラテン語は monere(警告する)という動詞の過去分詞から生まれました。monere は意外な単語を英語にもたらしています。一つは「モニター」という日本語になっている monitor で、機械としては「監視装置」、人間としては「何かしらの商品などについて感想などを提供する人」を意味しますね。もう一つは「怪物」の「モンスター」monster です。昔は「奇怪な怪物は神の警告」と考えられたため、「警告するもの」ということで monster が「怪物」の意味になったのでした。この形容詞 monstrous(奇怪な、途方もない)もよく使われる語です。
 裁判の関係でよく使う summon(召喚する)という語がありますが、これは sum-(下へ)という接頭辞に monere がついた動詞で、名詞は summons(召集、召喚)です。

 さて laundering はもちろん動詞 launder の動名詞ですが、この動詞は普通には「洗濯する」ことですが、俗語で「不正なお金の出所を隠すため外国の銀行などを移動させる」という意味があるのです。この launder の名詞形が laundry(洗濯屋)で「コイン・ランドリー」の出所です。これらの語はラテン語の lavare(洗う)にさかのぼり、兄弟としては lava(溶岩)、lavatory(洗面所)、lavish(雨のどしゃぶり>浪費する(形容詞))などがよく使われる語ですが、直系の子孫はやや古めかしい lave(洗う、沐浴する)です。もうひとつ、ラテン語の lavare の過去分詞 lotus からできた語が「ローション」 lotion です。

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