英語上級レベルでは、無視できないthere+ 前置詞の合成語
皆さんは therefore, thereafter という語を知っているでしょうか?
2語は通常の英文でもよく出てくる語ですが、辞書を見てみると、この他にも、therein,thereabout(s), thereby, thereupon, therewith など、there と前置詞が合わさった語がかなりあることに気づきます。
そして、それらの意味を見てみると、次のような「公式」が背景にあることがすぐ気付きます。
前置詞+it > there+前置詞
これらの語彙は文語的かつ古風な語ばかりで、主として堅苦しい法律文に出てくるものですが、論文などでもよく使われます。
英語では古風な語彙が、ドイツ語、オランダ語、デンマーク語など他のゲルマン語では普通に使われている
さて、私はドイツ語、オランダ語、デンマーク語と勉強していくうちに、英語ではすっかり廃れつつあるこれらの語彙が、他のゲルマン系諸語では、文語的ではあるが決して古語とは言えない語彙であることに気づきました。実際、日常の会話文やくだけた文体でも普通に使われるのです。そして、there にあたる語の代わりに、英語の here や疑問の where にあたる語などとの合成語もよく使うことに気づきました。
そこで、考えてみると、英語でも次のような公式が成り立つことがわかります。
前置詞+this > here+前置詞
前置詞+which(関係詞) > where+前置詞
辞書を引いてみてください。前者の例としては hereabout(s)、hereafter, hereby などがよく使われる語で、後者の複合関係代名詞としてはなんと whereabout(s), whereas, whereat, whereby,wherefore, wherein, whereof, whereon, whereupon, wherewith と10語も基本語彙の印が付いている語が載っています。
もちろん、これらの語彙は非常に堅苦しい文章語ですので、一般の英語学習者の方々は「こんなの覚えても」と思われるかも知れませんが、私は長年産業翻訳、ビジネス文を眺めてきて、これらの語彙が看過できない重要な語彙をあることを確信しています。多少とも高度な英語力をつけたいと思う方は、ゆめゆめおろそかにするべきではない語彙です。一度じっくり辞書で、これらの用例も見てみることをお勧めします。
< 英語以外のゲルマン語学習者の方のために >
ドイツ語学習者の方はすぐお分かりでしょうが、ドイツ語の場合、公式は次のようになります。
前置詞+es > da(r) + 前置詞
例: davon, darin, damit, daran, darauf, darueber など
前置詞+diese > hier+前置詞
例: hierauf, hiermit, hierin, hiervon など
前置詞+welcher > wo(r) + 前置詞
例: woran, womit, worauf, woraus, worin など
オランダ語は、het と結びついた意味の語は ervan, erin, erop, ermee, ertoeなどとなります。deze と結びついた語は hiervan, hierop, hieruit, hierin など、dat と結びついた語は daarvan, daarin, daarop など、そして関係詞はwaarin, waarop, waaraan, waaruit などの語形をとります。
デンマーク語は der-、スウェーデン語は daer- などと前置詞が合成した語を思い浮かべてみてください。たくさんありますよ。
< 格語尾 –ence >
堅苦しいついでに、英語に接する時間が長かった方は、hence, thence, whence という語彙を見たことがあるかもしれません。そしてこれらが here, there, where と関係のある語であると思いませんでしたか。その通りなのです。
この –ence は厳密には接尾辞ではなく、here, there, whereの元になっている代名詞の「~から」の意味をもつ格変化形なのです。ですから、hence, thence, whence は、現代語で言えば from here, from there, from where と同義なのです。