推薦にたる良い言語学の著書(研究書を除く)を中心に紹介いたします。
書名
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著者(編者)
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出版社
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コメント
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評価
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ヨーロッパの言語 (岩波新書) |
泉井久之助 |
岩波書店 | 岩波新書699。知識あふれる名著中の名著。 |
5
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外国語の水曜日―学習法としての言語学入門 | 黒田龍之助 | 現代書館 | おなじみ黒田先生のデビュー作。 |
4
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言語と社会 (岩波新書 青版 950) | トラッドギル | 岩波書店 | 岩波新書C99。社会言語学の簡便な手引書。やや古いがよい本。 |
4
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はじめての言語学 (講談社現代新書) | 黒田龍之助 | 講談社 | 講談社現代新書1701。やさしい言語学入門。 |
4
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世界の言語入門 (講談社現代新書) | 黒田龍之助 | 講談社 | 講談社現代新書1959。やや記述にばらつきがあるがよい入門書。 |
3
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異文化間コミュニケーションの技術―日米欧の言語表現 (講談社プラスアルファ新書) | 鈴木寛次 | 講談社 | 講談社+アルファ新書。タイトルで損をしていると思うが面白い本。 |
4
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言語学が好きになる本 | 町田 健 | 研究社出版 | 黒田本とは対照的に明るいミーハー調だが良著です。 |
4
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当節おもしろ言語学 | 城生栢太郎 | 講談社 | 黒田本、町田本よりアカデミックかつ豪快な一冊。おすすめ。 |
4
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<猪浦先生からのコメント>
城生佰太郎(じょうお・はくたろう)「当節おもしろ言語学」(講談社)
とってもおもしろい言語学の本です。単に「言葉の遊び百科」とでも題してもよかったのではと思われるほど遊び心に満ちた本です。でも、城生先生はれっきとして名のある言語学者で書いてある内容は大変オーソドックスな言語理論に裏づけされています。先生は音声にお強いので、特に口語、会話術に興味のある人にお勧めです。
黒田龍之助「はじめての言語学」(講談社現代新書1701)
ただいま売り出し中の黒田先生の言語学入門本。さすがエッセイストとしての才能にも満ち満ちた黒田先生の講義は、生徒を飽きさせない、しかし抑えるところは抑えてあるもので、おすすめの一冊。ところどころ、章の終わりにも言語学の基本図書が紹介してあり、これもさらに興味をもった人にとっての更なる一歩のヒントとして便利。
町田 健「言語学が好きになる本」(研究社)
私個人としては多少町田先生の見解に異を唱えたいところもあるが、上記2冊と並んで言語学入門本の傑作のひとつと評価したい。黒田先生がスラブ系言語専攻であるのに対し、町田先生は西欧言語がご専門なので、サンプルの出し方にしても違いがあって面白い。一番気に入っているのは、好きなタレントや女優さんの話が言語学に関係なく出てくる脚注です。この脚注はおそらく講義の際の脱線談話と思われます。
黒田龍之助「外国語の水曜日」(現代書館)
黒田本がダブりますが、こちらは上述の本より先に出たたぶん黒田先生のデビュー作。上記新書より一段とエッセイの色彩が濃いですが、副題が「学習法としての言語学入門」となっており、新書とは少し角度が違うのでお勧めです。私個人としては、むしろこちらの本が好きです。
今井邦彦「なぜ日本人は日本語が話せるのか」(大修館)
タイトルはこのようになっていますが、著者は明らかに「言語学入門」のつもりで書いたのではないかと思われます。上記の4冊に比べるとやや真面目な筆致ですが、大変面白いです。特に、昨今の「プラクティカル」一辺倒の語学教育に警鐘を鳴らしておられえる部分は共感がもてます。
島岡 茂「教養としての言語学」(白水叢書63)
恩師島岡先生による学生のための入門書。「教養として」とはいうものの、内容は極めてオーソドックスにしてアカデミック。無駄のない文体の中にどことなく先生の優しさを感じる本です。