英語の冠詞大講座 出版に寄せて
猪浦道夫著
英語の冠詞は独特の考え方で運用されている
私は30年前にローマで言語学を勉強してから、常に欧州言語の「冠詞」を比較研究してきました。それでわかったことは、「英語の冠詞のみが独特の考え方で運用されている」ということです。
英語の勉強だけをしている限り、英語の冠詞は理解できない
とりわけ、フランス語やイタリア語のようなロマンス系言語の冠詞とは、まったく異なった論理で機能しているので、たぶん英語の勉強だけをしている限り、英語の冠詞は理解できないであろうと思われます。英語で冠詞を正しく使うようになるには、冠詞だけいくら研究しても埒があきません。
英語の冠詞を理解するには、無冠詞名詞、代名詞所有格、動詞のアスペクト、文脈など様々な考慮が必要
英語の冠詞をさらに難しくしているのは、無冠詞の名詞や some, anyのついた名詞、代名詞所有格がついた名詞、さらにはその文章の動詞のアスペクト、文脈まで考慮に入れなければ、この問題は解決しない点です。
このような点にまで踏み込んだ既刊の参考書は初めてではないかと思います。
この冠詞大講座は、普通の参考書とは異なり、必要とあれば(読者に多少難しいと思われる場合でも)他言語の冠詞のことを引用し比較しながら、冠詞の謎を究明しようと試みています。この点でも、これまでの参考書より広い視野で英語の冠詞をとらえることに成功しているのではないかと自負しております。或る意味、読者にフレンドリーでないかも知れませんが、容赦することによって結局目的を果たせなければ意味がありません。
今の日本の語学教育は生徒に媚を売りすぎなので、たまにはこのような硬派な
参考書もいいのではないかと思います。
充実した英語の冠詞の演習ドリルもあり
何より皆さんに喜んでいただけると思うのが、半端な数でない演習ドリルです。これは大きく2つのグループに分かれており、前半は短文による英語の冠詞の重要な慣用語法をチェックし、完全にマスターしていただくための問題からなっています。
後半は、まとまった文章のなかで文脈を考えながら冠詞を正しく運用する練習をすることを眼目として、それらはただ単に答を掲げるだけでなく、複数の答があるような場合も含めて、逐一詳しい解説を施しました。
ひとりでも多くの方にこの参考書を利用していただき、英語の冠詞に対する恐怖症を取り除いていただければがんばった甲斐があるというものです。読者の皆さんにも応援していただければ大変ありがたく思います。
猪浦道夫