英作文では「態の向き」に注意:日本語と英語の構造の違いを知ること

英作文で間違えが頻発している、「態の向き」について、本日はお話します。  

最近、外国語作文は翻訳原稿を添削していて、よく感じるのがこの問題であるためです。常々、何をするにも、まず文の構造を分析して、その上で逐次的に「直訳」した上で最終訳をじっくり検討してほしい、と学習者にアドバイスしているのですが、どうも最近の英語教育では、このようなプロセスの方法をまったくと言っていいほど学んでいないようですので、今回取り上げます。

英作文で態の向きが逆になっている答案が非常に多い

英作文の添削をしていて「態の向き」が逆になっている答案が多いのです。「態の向き」というのは、つまり、主語を目的語と、目的語を主語と取り違えるということですが、これは、英語学習者のもう一つの問題である「格の意識」の問題とも関わりがあろうかと思います。  

どういうことかと言うと、(少し易しすぎる例文かも知れませんが)「私は疲れている」を I am tiring. と書く人がけっこういるのです。もちろん正しくは tiredとしなければならないわけですが、これはせっかちな学習者が tire という単語を電子辞書で引いて咄嗟に冒頭にある「疲」という漢字に目が行きわかったような気になって後はフィーリング訳してしまう、という単語の覚え方をしてきたことによりこういう現象が起きてしまうのではないかと思います。  

tired という語は非常に初歩的な語なので Im tired という文によく出くわすので、丸暗記しているお蔭で間違わないという人でも、もう少し難しい語、例えば「映画を見てぐっときた」などと言いたいとき、impress という動詞を使うといいよと言うと、じゃ Im impressing. と言ってしまうのです。こういう人は、同様に「彼はがっかりした」を He is disappointing. 「彼は興奮していた」を He was exciting. 「彼女は退屈していた」を She was boring. としてしまうのです。 

英語の動詞の訳語を覚え間違っていることが原因

これらの間違いは、すべて、上に出て来た動詞の原則的な訳語を覚え間違っていることに原因があります。tire は「疲れさせる」、bore は「退屈させる」、impressは「感動させる」、disappoint は「失望させる」、excite は「興奮させる」であり、それぞれの現在分詞は「そうした性質(傾向)をもった」の意味であり、それぞれの過去分詞は「そうした影響を受けている」の意味であることを抑えていれば、絶対に間違わないものです。 

自動詞・他動詞の両方がある動詞もある

もっとも「いたるところに例外は何でもありの英語」ですから、同じ語形で、自動詞、他動詞の両方がある動詞もあります。cut は「切る」の意味にも「切れる」の意味にもなりえますので、どちらの意味かは文脈で判断するわけですが、それでも翻訳(作文)作業においては、質のよい英和辞典で確かめながら書けば、絶対間違うことはないのですが、実際にはこうした間違いは後を絶ちません。  

英単語の意味を丸暗記していることが原因

このような感覚が鈍くなっているひとつの理由は、昨今の参考書の多くが、語彙を示すときに品詞を明記せずに、そのケースでの単語の意味を曖昧な日本語で与えていることもあると思います。(そのまま、自分で辞書を引かずに、そこに書いてある意味を丸暗記し、覚えた気になっている学習者も悪いのですが)こうした参考書では、もし tire, tiring, tired が語注に現れるとしたら、次のように書いてあるでしょう。 

tire: 疲れさせるtired: 疲れているtiring: 疲れる これを何の反芻もなる丸暗記するのは危険です。例えば、When I play tennis, I got tired. という文は「私はテニスをすると疲れる」訳されると思いますが、ご覧のように got tired の部分は日本で「疲れる」になります。

そこで、上記のように、品詞や態の向きに無関心のまま訳をあてはめてしまい、何と When I play tennis,I tiring. と書いた答案まで出てくるようになります。 こうなると、この方は中学1年の段階にまで戻って、そもそも be 動詞とはどのような性質のものか、日本語と突き合わせて学習し直さなければならないことになります。

教え方が悪いのであり、学習者のせいではない。

学習者には日本語と英語の構造の基礎的な知識を与えるべき

恐らく、英語の先生方はお笑いになるかも知れませんが、私はこのような学習者の方を無碍に非難することはできません。(国語の教師も含めて)教え方が悪いのです。 なぜなら、私たちの日本語は She beautiful. という構造の文が間違いではないからです。

古典ギリシャ語やロシア語でも同様の現象はあるわけで、「動詞がない文なんか間違いに決まっているじゃないか」と彼らを非難する前に、日本語と英語の構造の基礎的な知識を与えるべきと考えます。

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