今回は形容詞の格変化について、徹底解説を致します。
まずは、形容詞の用法について理解しましょう。
ドイツ語の形容詞の用法(英語との相違は?)
ドイツ語と、英語との相違から話を始めることにします。
次の英文を見てください。
The girl is beautiful.
この文を日本語に訳すと、「その少女は美しい」ということになりますが、ドイツ語の場合も事情は英語と全く同じです。das Mädchen(その少女)という名詞とschön(美しい)という形容詞とをistで結べばいいのです。
Das Mädchen ist schön. (1)
このように動詞sein(英語のbe動詞)で主語と結ばれ、主語の性質を規定する形容詞の用法を述語的用法と呼ぶことにします。この述語的用法での形容詞の使い方は、英語とほとんど同じなのです。ただ注意しなければならないことは、既に述べましたように、ドイツ語の場合、肯定文で主語が常に一番最初に来るとは限らないことです。
今度は次の英文を見てください。
She is a beautiful girl.
この文を日本語に訳すと、「彼女は美しい少女です」ということになりますが、ドイツ語の場合は英語の場合と事情が少し異なります。
Sie ist ein schönes Mädchen. (2)
(2)の文では形容詞は(1)の文での形容詞と少し形が違っているのに気づかれたことと思います。(2)の場合のように名詞の前に付いてその名詞を修飾する形容詞の用法を、付加語的用法と呼ぶことにします。ドイツ語の場合、この付加語的用法では、形容詞が修飾する名詞の性、数、格及び冠詞の種類によって形容詞が変化します。この形容詞の変化のことを形容詞の格変化(またまた格が出て来ました!)と呼びます。形容詞の格変化は変化の仕方によって3種類に分けることができます。
ドイツ語の形容詞の格変化
名詞の前に置かれて名詞を修飾するドイツ語の付加語には、その名詞の性、数、格を明示しようとする傾向が認められます。例えば、既に勉強した定冠詞と不定冠詞が名詞の性、数、格によって変化したのを思い出してください。
同様に、付加語的用法の形容詞が変化するのもこの傾向の表われであると考えることができるでしょう。
以下で見るように、冠詞の有無、不定冠詞か定冠詞かによって形容詞の格変化が異なっていますが、この付加語の傾向を頭の隅に置いておけば、なぜ格変化の仕方が異なるのかがある程度(確かにある程度にすぎませんが)理解できるのではないかと思います。つまり、形容詞の前に名詞の性、数、格を規定する語(例えば定冠詞)がある場合、その語が名詞の性、数、格を明示する役割を引き受けているので、形容詞は「弱い」変化をし、そのような規定をする語がない場合(無冠詞)には形容詞が「強い」変化をして名詞の性、数、格を規定しようとするのです。
形容詞の格変化は、形容詞の名詞を規定する強さの度合いに応じて、無冠詞、定冠詞、不定冠詞それぞれの場合にたいして強変化、弱変化、混合変化と呼ばれています。
ドイツ語の形容詞の強変化(無冠詞の場合の形容詞の変化)
形容詞が名詞の性、数、格を明示する役目を引き受けて、以下のように定冠詞dieser型の変化をします。ただし、男性と中性の2格が-enとなっていることに注意してください。また、強変化、弱変化、混合変化を通じて、性は複数形の変化には関係しません。
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単数 |
複数 |
||||||
男性 |
女性 |
中性 |
共通 |
|||||
1. |
kalt(カルタァ)er |
Wein(ヴァイン) |
kalt(カルテ)e |
Milch(ミルヒ) |
kalt(カルテス)es |
Bier(ビーア) |
süß(ズューセ)e |
Trauben(トラウベン) |
2. |
kalt(カルテン)en |
Weins(ヴァインス) |
kalt(カルタァ)er |
Milch(ミルヒ) |
kalt(カルテン)en |
Bier(ビーア)s(ス) |
süß(ズューサァ)er |
Trauben(トラウベン) |
3. |
kalt(カルテム)em |
Wein(ヴァイン) |
kalt(カルタァ)er |
Milch(ミルヒ) |
kalt(カルテム)em |
Bier(ビーア) |
süß(ズューセン)en |
Trauben(トラウベン) |
4. |
kalt(カルテン)en |
Wein(ヴァイン) |
kalt(カルテ)e |
Milch(ミルヒ) |
kalt(カルテス)es |
Bier(ビーア) |
süß(ズューセ)e |
Trauben(トラウベン) |
(冷たいワイン) (冷たいミルク) (冷たいビール) (甘いぶどう)
ドイツ語の形容詞の弱変化(定冠詞dieser型の語の後に来る形容詞の変化)
男性の1格、女性と中性の1格および4格以外はすべて語尾が-enです。強変化よりも明らかに変化の度合いが少ないのがお分かりでしょう。
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単数 |
複数 |
||||||||||
男性 |
女性 |
中性 |
共通 |
|||||||||
1. |
der(デア) |
reich(ライヒェ)e |
Mann(マン) |
die(ディ) |
schön(シェーネ)e |
Frau(フラウ) |
das(ダス) |
neu(ノイエ)e |
Auto(アウト) |
die(ディ) |
arm(アルメン)en |
Leute(ロイテ) |
2. |
des(ダス) |
reich(ライヒェン)en |
Mann(マンネス)(e)s |
der(デア) |
schön(シェーネン)en |
Frau(フラウ) |
des(ダス) |
neu(ノイエン)en |
Autos(アウトス) |
der(デア) |
arm(アルメン)en |
Leute(ロイテ) |
3. |
dem(デム) |
reich(ライヒェン)en |
Mann(マン) |
der(デア) |
schön(シェーネン)en |
Frau(フラウ) |
dem(デム) |
neu(ノイエン)en |
Auto(アウト) |
den(デン) |
arm(アルメン)en |
Leute(ロイテ)n(ン) |
4. |
den(デン) |
reich(ライヒェン)en |
Mann(マン) |
die(ディ) |
schön(シェーネ)e |
Frau(フラウ) |
das(ダス) |
neu(ノイエ)e |
Auto(アウト) |
die(ディ) |
arm(アルメン)en |
Leute(ロイテ) |
(金持ちの男) (美しい女) (新しい車) (貧しい人々)
形容詞の混合変化(不定冠詞mein型の後にくる形容詞の変化)
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単数 |
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男性 |
女性 |
中性 |
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1. |
ein(アイン) |
reich(ライヒャア)er |
Mann(マン) |
eine(アイネ) |
schön(シェーネ)e |
Frau(フラウ) |
ein(アイン) |
neu(ノイエス)es |
Auto(アウト) |
2. |
eines(アイネス) |
reich(ライヒェン)en |
Mann(マンネス)(e)s |
einer(アイナァ) |
schön(シェーネン)en |
Frau(フラウ) |
eines(アイネス) |
neu(ノイエン)en |
Autos(アウトス) |
3. |
einem(アイネム) |
reich(ライヒェン)en |
Mann(マン) |
einer(アイナァ) |
schön(シェーネン)en |
Frau(フラウ) |
einem(アイネム) |
neu(ノイエン)en |
Auto(アウト) |
4. |
einen(アイネン) |
reich(ライヒェン)en |
Mann(マン) |
eine(アイネ) |
schön(シェーネ)e |
Frau(フラウ) |
ein(アイン) |
neu(ノイエス)es |
Auto(アウト) |
不定冠詞mein型の語は、男性1格、中性1格・4格で語尾を欠いており、その3箇所だけ形容詞が名詞を規定する役目を果たし、dieser型となっています。その3箇所以外は弱変化と同じです。
複数形には不定冠詞が付きませんので、次にmeinをかぶせて複数形の変化を挙げておきます。
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複数 |
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|
共通 |
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1. |
meine(マイネ) |
klein(クライネン)en |
Kinder(キンダァ) |
2. |
meiner(マイナァ) |
klein(クライネン)en |
Kinder(キンダァ) |
3. |
meinen(マイネン) |
klein(クライネン)en |
Kindern(キンデルン) |
4. |
meine(マイネ) |
klein(クライネ)en |
Kinder(キンダァ) |
形容詞の語尾変化についての注意
- -elで終わる形容詞は語尾変化のとき語幹の-eを省きます。但し、語尾が -enで終わる時は、語尾 の -eを落とすことがあります。
dunkel(デュンケル) → dunkles(デュンクレス) Zimmer(ツインマァ)
dunkel(デュンケル) → Zimmer(ツインマァ)
-er、-enで終わる形容詞も語尾変化のとき語幹の-eを省きます。
teuer(トイアー) → teu(トイ)res(レス) Auto(アウト)
trocken(トロッケン) → trockne(トロックネ) Luft(ルフト)(trockenの場合は ~も使われます)
(2) hoch(ホッホ)(高い)は付加語的用法の場合に限り、語幹がhohになります。
hoher(ホーアァ) Berg(ベルク)
高い山
(3) 二つ以上の形容詞が同一の名詞を修飾する場合は、原則として語尾は同じです。
Ein(アイン) glückliches(グリュックリッヒェス) neues(ノイエス) Jahr(ヤール)!
新年おめでとう
ドイツ語の形容詞の格変化は初級文法でも躓きやすい文法項目の1つですので、まだ理解が出来ていなくても大丈夫です。
ポリグロットの通信講座で、多くの方の添削・指導をしてきた経験・実績がありますので、どうぞお気軽にご連絡ください。