ポリグロットの多言語学習コース(トリヴィウム・コース)を始めてから、学習法に関するご相談をいただきました。
学習法に関してはこれまでにも私見を述べさせていただいていますが、最近ますまず確信をもったことを少し過激にお話します。
私のところに相談に来られるのは、ほとんどが「~語の翻訳を通して仕事ができる(お金が稼げる)ようになりたい」とおっしゃる方が大多数ですので、そのような目標をもっておられる方を対象に想定しているとお考えください。(また、言語は、西欧言語を想定して書きます)
ポリグロットになるために必要な学習法とは?
次のようなプロセスを踏んで学習されているかどうか、をチェックして欲しいということです。
1)普通の文章を、辞書を使って構わないのですが、読解(=和訳)するときに、文型がどのような文型か、名詞と動詞に関してどの部分が修飾語(句)か、そしてすべての語の品詞を言えるか、以上の点に関して100%確認しながら解釈している。(要するに、これが分析作業です)
2)自分の知識の範囲内で「ありえない」語順や文法現象に出会ったときに、それを文法的(=文法的に正しいということ)であると確認する方法論を確立しているか。(ただし、ナマの翻訳作業の中では、デタラメな文章はいくらでも遭遇します。それを書き手のせいと断定するにはなかなかの地力がいります)
3)原文を愚鈍なほどにいったん「直訳」できるか。へんてこな日本語を、しかしともあれ理解可能なレベルに直訳する、というのも地力がいります。ひとつ例をあげます。
My sister found an outlet for her irritation in eating excessively. という文を「直訳」してみてください。つまり「妹(姉)は過度に食べることに(おいて)その苛立ちに対するはけ口を見出した」といったん訳して欲しいのです。その上で、じっくり自然なこなれた日本語を書くべく知的格闘することが必要なのです。(ここでは、日頃からの「良質の」日本語の読書量がモノをいうことは言うまでもありません)
4)自分の文法力をキメ細かく確かめ、日本語記述力を高めるのに最も有効な方法は、和文外国語訳を常に平行して勉強することです。作文をしないと気が付かないことは大変多くあるのです。作文力がない翻訳者は絶対ポカがなくなりませんし、根拠のない自己流の解釈を押し付けがちです。会話学校でよくやらさせる自由作文は翻訳学習をしている生徒に関しては不適切です。日本語との格闘がないからです。(別の学習目的のためには有効な場合もありますが)
方法論の確立ができた方は、次第に学習時間が減少する
以上の方法論が確立していると思う方なら、後は、時間をかけて演習してみればよいのです。例えば、フランス語なり、ドイツ語なりで、一定の水準にまで実力がついた人は、第2、第3外国語は放物線的カーブで、マスターするまでの学習時間が減少します。
私の元では多数の「ポリグロット」(5か国語以上の学習者)がいますが、彼らは、それまで英語学習に費やした時間の5倍の時間、学習に割いたわけではありません。
英語に関しても伸び悩んでいると思われる方は、1)~4)までの学習プロセスに問題がないか見直してみてください。たぶん、自信をもって「バッチリです」と言える人は恐らくいないと思います。