例によって、下記のカタカナ語の綴りをちゃんと書けるかどうか試してください。そして、その単語についてもっているイメージや背景を考えたことがあるか、考えてみてください。
1)(マウスを)ドラッグする
2)ガラクトース
3)サルタン
4)カーテン
5)ファクシミリ
6)ビールス(ウィルス)
7)カクテル
8)サミット
9)インスタント
10)ビーグル(犬)
- 語学プロのための単語増幅術 解説
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1) drag
以前「マウスを drug する」と書いていた人がいたので、日本の将来に危惧を抱して
出題しました。これだと「マウスに薬物を注入する、マウスをなだめる」というような
意味になります。なかなかシュールです。ここでは、マウスを物理的に「引きずる」と
いう意味ですので drag が正しいですね。この drag は draw と同じルーツの言葉で、
前者は低地ドイツ語、後者は古英語の語形が元になっています。
2) galactose
ガラクトースは哺乳動物の乳汁に含まれる単糖類で、乳児の成長を促進する大事な
物質だそうです。ガラスとは関係ありませんよ。galact- はギリシャ語で「乳」を表わす
接頭辞で、galaxy(星雲)とも同語源です。ギリシャ語で gala = milk、xias = way の
意味なのです。というわけで、別名 Milky Way(銀河、天の川)というのですね。
3) sultan
イスラム教国の君主をサルタンまたはスルタンと言いますね。大文字で書き起こすと
昔のトルコ皇帝を意味します。転じて「暴君」の意味もあります。さらに意外なことに
鳥のシジュウカラや花のヤグルマギクの意味でもあります。語源はアラビア語で
「君主」を意味する 語です。
4) curtain
この単語は俗ラテン語の cortina に起源をもちます。原義は「小さな庭」ですので、
court と同源ということになります。その後、隔壁、仕切りのような意味に変わり、つい
にはカーテンの意味になったというわけです。
5) facsimile
最近は縮めて fax などといっていますので気がつかないかもしれませんが、fac- と
いう語幹はこのメルマガの読者ならもうご存知ですね。ラテン語 facere(作る)に由来
します。すると残った部分は -simili で similar と関係があるとわかりますね。「類似
したものを作る」というわけで「複製する」という意味になったのです。
6) virus
ラテン語の綴りをそのまま引き継いでいるこの単語のラテン語での元の意味は「悪い
液」の意味で、後に病毒、病原体の意味になります。日本語はビールス、ウィルスなど
と発音されていまるのはご存知ですね。この派生語として virulent(有毒の)を覚えて
おきましょう。
7) cocltail
この言葉の語源は一説では、19世紀初頭の米俗語だとか。cocktail とは「雄鶏の
ような尻尾」ということで、そこから尾を切った馬を指すようになります。で、当時、
雑種の馬の尻尾を切って短くしたため、雑種>混合物の意味が派生したのでは
ないかといわれているのです。
8) summit
語源はフランス語の sommet で、この単語はラテン語で「最も高い」を意味する
summus に縮小辞がついたものです。そこで「合計」を意味する sum、「要約」を
意味する summary とは同族語というわけです。
9) instant
広く日本語の中に浸透している形容詞のひとつですが、どうして「即席の」なのか
というと、in(近くに)と stant(立つ)なので「すぐに~」というわけです。-ant は現在
分詞語尾ですから、元の動詞はラテン語 stare で、英語の stand と同源です。
名詞形の instance は「近くにあること」から「急用」の意味の変わり、さらに「場合、
例(証)」の意味が派生しました。異綴形の instancy は「切迫、即時性」の意味が
残っています。
10) beagle
本来ウサギ狩り用の犬だったそうで、現在ではスパイ、探偵、巡査のような意味も
あります。語源は古いフランス語で begueule という語で「荒々しい喉」の意味。その
太い吼え声からついた名です。フランス語の gueule は通常動物の口の意味で、
口語ではふざけて de'gueulasse!(吐きそう、めちゃ不味い)とよくいいます。