ポリグロットになるための語学学習について、コラム形式で連載をしていきます。(本記事の人名編の次は、地名編をご覧ください)
語学学習をされる際に、悩まれるのは、まずは「語彙の増やし方」ではないでしょうか。
この点についてアドバイスを幾つかさせていただきます。
英語ばかりでなくほかの言語学習者の方にも、初級から上級学習者まで気楽に読んでいただけると思います。
語彙の増やし方として、主に5つの学習法をお勧めしています。
その5つとは、
①カタカナ語について徹底的に造詣を深める
②造語法(単語の派生の仕方)について少し学問的に 勉強する
③その言語の古典語を断片的にでもよいので少しかじってみる
④辞書の語源欄の読み方をよく知っておく
⑤英英辞典など、その国の辞書で折に触れてわかりにくい語などの定義を読んでみる といったところです。
①はもっとも初歩的な方法、③と⑤は少し上 級レベルの方に向いています。
今回は①のカタカナ語について徹底的に造詣を深めるの実際のやり方をご紹介し ましょう。
カタカナ語といっても幅が広いですから、今回は人名に こだわってみます。
皆さんの知人、お友達やそれぞれの分野の 著名な人物の姓にはどんな意味があるか、徹底的に調べてみ たことはありますか。なかったらそれから始めてください。
英語の名前では、職業名や身体特徴などがよく姓になることが知られています。私が知り合った英米人の名前から拾ってみ ると、Baker, Smith, Long, White, Green, Brown などがすぐ思い浮かびます。
このほか、私があとで調べてみてわかったものに Thatcher (わらぶき屋根職人)、Specter(幽霊)、Hatcher(孵化する 人)といったところがあります。で、私の連想の世界を知っていた だくために(そして、それを真似していただくために)、この3語を 例にとり、それを覚えたときのいきさつをお話しましょう。
ドイツ語、オランダ語、英語の言葉遊び
あるとき、ゲルマン語の歴史の授業で、「屋根」のことをドイツ語で Dach、オランダ語で dak といい、同時にドイツ語の d が英 語ではよくthになることを知ります。それで調べてみると、英語で は thatch がそれに対応することが判明します。ムム、この綴りは どこかで見たことが。考えてみると、80年代の英国の首相 Margaret Thatcher だ、そうか彼女は「藁屋珠子」(Margaret はギリシャ語で「真珠」の意味)だったのか、と思い至ります。 すると次の瞬間、綴りの類似から私の友人 D. Hatcher の名前が思い浮かびます。hatch は潜水艦などの蓋のことであろう、とするとヤツは「蓋を開ける人」なのかしら、と思って調べてみる と「蓋を開ける」という動詞はなく、同じスペルで「孵化する」という動詞があることがわかります。変な名前!と思って本人に会ったとき聞いてみると、「知らないけど、hatchは英国では中世の運河の水門の意味があるので、先祖は水門の番人だったんじゃない?」 ということ。
その彼が、あのアメリカ人の D. Specter は嫌い、と言っていた のを思い出して、specterってなんだろう、と調べてみたら「幽霊」 だったわけ。なるほど、幽霊が好きな人なんて滅多にいませんね。
英語以外の言語を学習されている方は、横のつながりを意識して
それから、英語以外の言語を学習されている方は、横のつながりを調べてみるといいです。知り合いの米国人の弁護士に Fox さんという人がいます。
考えてみると、イタリアの有名なジャーナリストで Volpi(狐)さんという方がいました。するとJ 大学の スペイン語の教授の Feliz Lobo(狼)先生、ドイツの作曲家 Hugo Wolf(狼)の名が浮かんできます。Lobo 先生のお名前 feliz は happy の意味の形容詞なので、「狼・幸男?」ですか。してみると、私の故郷横浜にある F 女学院は「幸せ女学院」か、 そう言えば某国にもそんな名前の組織があったような……
このような「遊び」(プロセス)を経て覚えた単語は絶対忘れませんよ。語学学習は楽しむものです。皆さんも試してみてください。